冷たいホットココア
『幸せに、なってよ』
もう、読めなかった。
後から後から涙が出てくるのを、拭うことも出来ずに。
呆然と手紙を握りしめる。
「何で、何で……。救われたのは、俺なのに」
初めて会った時のアイツは、籠の中の鳥だった。
綺麗で、可哀想な籠の中の鳥。
だから、俺はアイツを守ろうと決めた。
“ねぇねぇ、聞いて。なんか私、男装しなきゃいけなくなったみたい。これからは、俺って言わなきゃいけないのかな?”
そうやって、明るく笑いながらも。
陰で膝を抱えて、泣いてるアイツの為に。
俺が全てを背負うと決めたのに。
“私は、俺じゃない。私を見て……!”
もう、傷付けないと決めたのに。
「幸せになれるわけ、ねぇだろ。
俺は、俺は……っ
…………お前といる時が、1番幸せだったよ」
もう、そんな言葉すら届かない。
アイツが残したのは、手紙と冷めたホットココア。
クシャクシャになった手紙から、アイツらしい。
綺麗な字が覗く。