青空に、思いを
私はちらりと葵を見ると、ばちっと目があった。


 すると、何がおかしいのかクスクス笑い始めた。



 ・・・なに、この人。私が何かした?


「こらっ!そこ!」



 げっ、やばい、怒られるかも・・・。こいつのせいで怒られたらどうしてくれんの?



 恐る恐る先生を見ると、私ではなく、他の生徒に怒っているのがわかった。



 先生の視線の先には、下を向き、うつむいている少女がいた。



「授業中に漫画を描くとはどういうことだ!ノートをとれ、ノートを!」



 え、漫画描いてんの? もしかしてあの子、漫画とかアニメ好きのオタク?




 あの子の名前は確か、成田あゆみ・・・だっけ。



 すごい性格が暗いせいで、クラスでいつも1人ぼっちだし、友達と一緒にいるところを見たことがない。



 休み時間には、いつも何かを熱心に書いてるし。



 もしかしてあれは漫画だったのかも。



「漫画を描くなら休み時間に描け!・・・そして」



 先生は次に私に視線を移した。



「佐藤、お前もだ。授業中に小説を読むのはやめなさい。次に読んだら没収するからな」



「す、すみません」


 私は頭を下げて謝った。



 ほら、葵のせいで怒られた。内申点下がったら最悪なんですけど。



 私はさっき机の上に置いてあったメモに『怒られたじゃん。だれかさんのせいで』と書き、隣の机に投げた。



 数分後、メモが戻ってきた。見てみると、『えへへっ、ごめんごめん』と書いてあった。




 本当に反省してんの?って私は思った。ちらりと横を見ると、手を合わせてごめんのポーズをしている。


 まぁ、今回は許してやるけど。




 というか、葵は本当に不思議だ。男子って普通、えへへっとか言う? それ、女子が使う言葉じゃないの。



 ・・・でも、私、葵みたいな人、嫌いじゃない。



 葵のその、優しい性格っていうのが、私には羨ましかったのだ。






 


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