青空に、思いを
「・・・何をやってるの?」


 私はその声をきいて、少しだけ驚いた。



 もしかして、遥に何か言ったの?でも、誰が?



 遥はあゆみを指さして言った。



「何って、こいつに宿題やってきてって頼んでるの。見りゃわかるでしょ?」



「・・・それはいじめって言うんだよ。そんなこと、しちゃダメだよ。成田さんがかわいそう」



 そう遥に言ったのは、葵だった。



 私は、葵がとても勇気ある人に思えた。



 彼はとてもしゃべり方がおっとりしているから、すぐに遥を説得できそうだった。



 葵は続ける。



「ほら、みんなも黙ってないでさ、そんなことダメだよって言おうよ。見て見ぬ振りするなんてみんなも成田さんをいじめているようなものだよ。それに、金山さんはどうして人をいじめるのかな?人をいじめるなんて、犯罪と同じだよ」



 遥は少しひるんだように、唇をかんで悔しそうに葵をにらみつけていた。



「なんであたしがあんたにそんなこと言われなきゃならないのよ!?あんたがこれからどうなっても知らないからね!」



 キーンコーンカーンコーン・・・。



 そのとき、ちょうどチャイムが鳴り、教室に先生が入ってきた。



「おーい、何をやってるんだ。席につけー」



 遥はもう一度、葵をにらみつけてから自分の席に戻った。
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