映画
行かないで…
それを、嫌なんだと勘違いしたのか…
ごめん…
そう言って手を離します。
私は、いつからこんなに欲張りになってしまったのでしょう。
前までは、悠里くんを見られるだけで幸せだったのに。
話せた日には一日中絶好調だったのに。
今では、回された手が離れただけで、寂しくなってしまうのです。
ごめんね…
そう言って去っていこうとする悠里くん。
やだ、行かないで、また抱き締めてよ、ねぇ、もう一度、ぎゅって、して欲しいのに。
……追いかけて、いいのかな。
小さくなっていく背中に、走って追いかけて、ぎゅって抱き締めたいんです。
ボヤけていく視界と、追いかけたくなる衝動と、ぐちゃぐちゃした気持ち。
あぁ、角を曲がってしまう。
視界から悠里くんが消える
考えるより先に身体が動いていました。
悠里くんが曲がった角を曲がりました。
その時に、誰かとぶつかってしまいました。
謝りたいけど、そんな余裕も最早無かったです。
い…な、い………
もう、駄目なのかな…
せっかく、せっかく抱き締めてくれたのに、やっと、近づけたのに、
嗚咽を漏らしながら、
崩れ落ちてしまいました。
力が、入らなかったんです。
酸素を求めて必死に喘いでいました。
すると、後ろからふわりと抱き締められました。