守られるのは卒業よ!
強気で向かっては来るが、じつは自分の実力さえもわかっていなくて、今目覚めようとしている力におびえる弱さを持った危うい娘にハリッシュは妙に引きつけられてしまった。


「おっと、俺は紳士を絵に描いたような品行方正な男だ。
俺が欲しいと思った女は確かに誰でも手に入るさ・・・。
けど、選ぶ権利だってある。
見た目や金欲しさだけの女とは、相応のビジネス協定をしてからでないと付き合わないね。」


「でも、私は今・・・襲われたわ。
魔法で闇に閉じ込められてまで・・・。うっ、うっ・・・。」



「ま、待てって。君は自衛したじゃないか。
さすがナギンの娘だよ。
俺の魔法にかかっていながらも、身の安全はきっちりと対抗する力を発動させてた。
俺はそれに負けたんだよ。
いやぁ・・・おみそれしました。」


「ぇ・・・そうだったの?
私は魔法を使える人だったんだ。」



「君は完全に目覚めを迎えていないのさ。
はっきり言わせてもらえば、君はかなり優秀な魔導士だと思うよ。
ただ生きてきた環境が魔法を必要としないところだったから、力は眠ったままで何ら不自由はなかっただけなんだ。」


「なるほど、それで今回やっと、私にとって脅威のイヤラシイ敵があらわれたってことなのね。」


「脅威のいやらしい敵って・・・俺かぁ?
ひどいなぁ。
俺は君を見直したし、ナギンに会わせようと真剣に考えたとこだったのに。」


「お父様に会えるの?」


「嫌なのか?」


「そんなことないけど・・・ちょっと怖い。
こんなわかんないとこにいるだけでも怖くて・・・。

スウェルたちの話ではバケモノだって出るんでしょう?」



「もしかして、君はシューカウリから出たことがないのか?」


「ええ。外国なんて知らない・・・リオレバが攻めてきて、新しい領主様のスウェルがきて魔法騎士の本物を見て私が薬草を使ってじつは魔法を応用してたなんていうのも初めてきいて・・・。
びっくりしちゃってたのに。」


「なるほど・・・。
君なりに努力していたのはわかるけど、師は選ばなければ高みへは登れないさ。
せっかくだから、ナギンに会うまでの間・・・俺が君の魔法の師になってあげよう。」


「ほんと?」


「ああ、俺は紳士で約束だってちゃんと守る男だ。
でも・・・男だから、美人を前にするとんふふふ。」


「頭の中がエッチなことで凝り固まってる男なのね。」


「そこまでいうか?
まだ初対面みたいなものだぞ!失礼だな。」


「だって・・・ハリッシュを相手にするとそういいたくなるんだもん。」


「ふうん・・・いい傾向だな。
俺は君にとってお話しやすい男であり、師匠なのだからね。
よろしく頼むよ。マリカちゃん。」


「もう・・・だけどスウェルたちは心配してるだろうな。
手紙を送ってもいい?」


「そうだな・・・あいつなら俺を犯人にして追ってきそうだしな。
魔法で手紙を送ってやろう。
もちろん差出人は君だよ。
まず、要件を書きだしてみな。
送り方の魔法を教えてやるから。
今日の課題はそれでいこう。」


「はい!」
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