守られるのは卒業よ!
マリカは急に冷たく言い放つスウェルの言葉にびくっと震えた。


「驚かせてごめん。
ナギンやライダル・・・君にかかわる人たちに会うことを許さんとは言わないよ。
でも、住まいは別にしてほしい。

君はこの邸に雇われたことになっている。
誰よりもこの邸に詳しいし、もう使用人たちだって君との連携を快く思っている。
だから、仕事に忠実であってほしいんだ。」


「あ・・・す、すみません。
私、ほんとに何もわかってなくて。」


「わかってくれたなら、明日の朝からまた剣の稽古だ。
君の魔法の勉強がすすんだなら、それに合わせて魔法を組み合わせた剣術も教えよう。」



「ほんとですか!わかりました。
ありがとうございます。スウェル様・・・ありがとうございます。」


「ここには兵士はいないから、スウェルでいい。
俺は本気で君を愛人として持つ気はないんだからね。」


「すみません。じゃ、また明日・・・朝に。
失礼します。」



足早にマリカは自室へともどっていった。

そして、部屋で深いため息をついていた。


「ここはもう私の家じゃないんだわ。
スウェルがどんなに親切にしてくれたって、甘えてはダメ。
私は鍛えれば、いい手駒になる素質があるから育ててくれるだけなのよね。

かといってカナビスの奥さんになるなんて考えられない。
カナビスは嫌いじゃないけど、何でも見透かされそうだし、気がゆるせない気がして・・・。
それなら、まだハリィの方がずっと自分でいられるのに。」




翌朝、マリカは中庭へ出て、スウェルと剣の稽古をした。
剣の持ち方、振り下ろし方などはライダルに習った通りでもあったので、すぐに実戦練習に入ることができた。


「しばらく、魔法は使わない。
魔法習得の様子を俺からハリッシュに尋ねるから、そっちの進み具合で考えることにするよ。」


「はい。よろしくお願いします。」


スウェルはあまり手加減はせず、敵が狙ってくるだろうところをどんどんマリカについてくる。


「あっ!、うわっ・・・きゃっ!」


腰のあたりを何度か剣が飛び込んでくる動きにマリカは苦戦していた。

そしてとうとう、足がもつれて倒れてしまった。


「いったぁ・・・い。」


「マリカ!すまない。膝が痛むかい?」


「いえ、このくらい薬草と魔法で大丈夫だと思いま・・・きゃあ!!」


スウェルはマリカをお姫様だっこしたまま、マリカのベッドルームまで運んだ。


「ほんとにすまない。初日だというのに・・・俺は。」


「気になさらないでください。
私は奴隷と言われても文句はいえない立場なのに、ここで領主様自ら剣の稽古をしていただけるんです。
剣でも格闘技でも稽古をつければ、けがの1つや2つできてあたりまえでしょ。

それに私はけがの対処には心得ています。
だから、今日まで生き延びられているんですよ。
少し休みますから、お仕事にいってください。」


「わかったよ。じゃ、あとで・・・無理はしないように。」


「はい、ありがとうございました。」
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