守られるのは卒業よ!
マリカの部屋にとんだハリッシュはマリカが家のどこにもいないことを確認して、すぐにスウェルに報告した。


「何だって・・・マリカが行方不明に?
どうしてそんなことに。
短距離は確実に合格してたんだろう?

この家はそんなに離れているわけじゃないのに。」


「すみません・・・おそらく、彼女は亡くなった兄上たちのことをイメージしてしまったんだと思われます。
この家のイメージ。いい思い出がありすぎて、思い出になってしまった人を思い描きたくない気持ちが加わってしまった。

そこまで配慮することができなかった俺の落ち度です。
すみません・・・すぐに捜します。」


「俺も捜そう。この家をイメージしたのは確かなんだね。」


「ええ、それは間違いありません。」


「わかった・・・じゃ、この家の中を捜索してみるよ。」




邸内でマリカの捜索が始まった。
そして、マリカ本人はというと・・・ある男の腕の中にいた。



「危ないところだった・・・死んだ者の行き着くところをイメージしてはいけないな。
僕が飛び込まなかったら、君は今頃、黄泉の国へ飛ばされてしまっただろう。」



「う・・・あ・・・あたし・・・あなたは誰?」


「バカ者がぁ!!死んだ人間をイメージして追うなど、何を考えてる!」



「えっ?わ、私は・・・帰る家をイメージして・・・そうしたら兄を・・・思い出して。
悲しくなって。
ここはどこなんですか?
私、魔法を失敗しちゃったんですね。
どうしよう・・・きっとハリィやスウェルが心配してるわ。」



「スウェルといったな。
スウェル・ラウォン・ビレッサのことか?」


「ええ、そうよ。
今は私の住んでた邸に住んでるわ。
そして、ナルカラムの領主をしてるわ。」



「そうか・・・彼は君の家に住んでいるのか。
でも、君は奴隷じゃないんだな。

ってことは・・・もしや。」


「私はスウェルの愛人です。
そういうことにしないと、奴隷になっちゃうんですって。
いい手駒にならなければいけないから、こうやって魔法を勉強中なの。

私はナギン・リュラ・サーガロスの実の娘だから、魔法の筋はいいはずなんだそうなの。」



「ほぉ・・・君がナギンの。そうか・・・見つかったんだな。
だが、君は心が傷だらけだ・・・そんな人に魔法は無理だな。」


「どうしてですか?
どうしてそんなこと言われないといけないの?
私はどうしても魔法を習得しなきゃいけないんです。

そうでないと・・・私は奴隷になるしか・・・。」


「ナギンの娘なら、奴隷になるなんてありえないだろ。」


「奴隷です。私はマリカ・エリード・・・シュウカウリの負けた騎士の娘です。
兄たちだって戦死して・・・それで密かに剣の練習をして暮らしていたのをスウェルに見つかって。
自宅を提供してガイドする代わりに、便利な部下になるって約束で・・・愛人になったんだもん。」


「いろいろと事情があるんだね。」


「ごめんなさい、助けていただいたのに・・・関係ないことばかり言ってしまって。
申し訳ついでに私の部屋に私を送り届けてくれませんか?

黄泉の国に行くのを止めてくださったんでしょう?
ってことはかなりすぐれた魔導士なんでしょう?」
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