守られるのは卒業よ!
オーレアは悔しそうにつぶやいた。


「マリカを救ったときに、僕はこともあろうに・・・彼女をひとりの女性として愛しく思ってしまったんだ。
おかしいだろ。
上流階級の美しいお嬢様方を、見飽きる程見てきた、この僕が初めて、ひとりの娘にどうしようもない思いを抱いてしまった。
もちろん、ちっちゃなマリカもかわいくて魅力的だったけど、今ほど心が揺さぶられることはなかったんだ。

君にも嫉妬して・・・なんであんなにムキになって醜い考えで・・・と自分でもびっくりしたよ。
そのくらいマリカがかわいくて。

でも、僕は気づいてしまったんだ。
マリカは僕ではなく、君にひかれているんだとね。」


「えっ!!?」


「魔法はひとの気持ちを察する道具にしちゃいけない。
そう、天才魔導士の僕は知っていること。

しかし毒づいた僕には、わかってしまうことがある。
魔法を使っている僕を見るマリカは僕から気持ちが離れていくんだ。
僕の見た目や地位や行動から、僕を好きでいようとしてることはわかるんだ。

けど、彼女は人を内面で見るらしい。」


「ちょ、ちょっと待ってください。
なぜ、俺にひかれてるなんて・・・」


「そこまではわからないよ。
人間の感情とは難しく、わからないものだね。

でも僕には、マリカが君を求めているのがわかる。
きっと、彼女が恋に落ちた相手は、君だったんだろうな。」



「そ、そんなこと言われても・・・それにオーレン・・・なぜ急にそんなこと。」


「なぜだろうな・・・。
君という存在が怖いから、待ってほしいと頼みにきたというべきかな。
僕がいなくなるまで、せめてマリカを愛させてほしいと・・・ね。」


「オーレン・・・。それじゃ、君が死ぬのを俺は楽しみに待ってろっていうわけか?
そんなことはできない。
領主を誰かに代わってもらって、俺は旅に出る。
そうすれば、君はマリカと・・・。」


「それはだめだ!君はこの国を守るため、マリカを守るためにもいてくれなければならない貴重な魔法騎士だ。
それに・・・マリカを支えられる唯一の存在だ。

頼むよ。あと少しなんだ。
あと少しでマリカの教えを学び、薬草と回復魔法の使い方をマスターする回復魔法師たちが何人か増えてくる。
そうすれば、僕のようにドジな魔導士も安心して戦えるようになるさ。

だからさりげなく、彼女を支えてやってくれ。
都合よくかもしれないが、彼女は僕たちを選ぶ気はまだないらしいから。」



「でも・・・こんな話きいてしまったら。」


「まだ、ちょっと時間はある。
僕は大丈夫だよ。
ただ・・・魔物たちがいつ押し寄せてくるかが、気がかりだ。
苦手な木の効果で今は結界のようになっているが、順応するのはそんなに遅くはないはずだ。

そのときには君が先頭に立って、がんばってほしいと思う。
もうそれができるはずだ。」


「やるしかないんだな。」
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