守られるのは卒業よ!
マリカは震えた。
毒に関してもいろいろと中和剤を作ったり、組織を変形させてうまく体の中から抜き取ったりと努力はしている。

しかし、正体不明の魔物の毒となると、サンプルがなさすぎて、まだ着手もしていない状況だ。


「なぜ、ずっと秘密にしてたんです?
ここにあなたが設立したとても立派な病院や研究施設があるというのに・・・。」


「腕も治らなさそうだったし、憑りつかれてしまった僕に落ち度があるんだから、もういいとあきらめていたんだ。
でも・・・君が腕を元通りにしてくれて、そして・・・君がスウェルのことを特別に感じているのを知ってしまって、つくづく毒の本当の恐ろしさを感じたところだったのさ。」


「毒の本当の恐ろしさ?」


「魔物の毒は嘘が見えてしまうんだ。
だから、君が僕に気を遣っていい返事をしてくれたことも、本当はスウェルに会いたいと思っていることもわかってしまう。
正直いって悲しかった。

あ、でも君の気持ちは大切にしなきゃだめだ。
僕にはいい未来などないのだからね。」


「そんなぁ・・・そんなこといって・・・オーレアは勝手です!
私を助けておいて、好きだといって、もういなくなるなんていわないでよ。」


「マリカ・・・。」


「どのくらいなんですか?
オーレアは命の時間をもう知ってるから話したのでしょう?」


「うん。半年から1年かな。
1年はきっと無理だね。
それまでに何とか化け物が集団で来ないでほしいけどね。

もうすぐ命が消えゆく予定の王様と僕の2人で強固な結界を張ろうという約束になってる。
ハリィにもその手伝いを頼むつもりだよ。
優秀な魔導士をなめるなよっていうくらい強い結界を張れる塔を建設してる。」


「そんなぁ・・・。
そんな塔は悲しすぎます。」


「ごめんね。僕の子どもみたいに思ってくれたらいいよ。
そしてこの国の、いや、世界の未来のために役立てられたらいいなって想いはあるんだ。

けど、化け物たちがどのくらい押し寄せるかわからない。
最後は決戦になるだろう。
そのときは、そのときはスウェルに先頭に立って戦ってもらうしかない。
スウェルが君の心の支えになり、君がスウェルの癒しなってくれれば・・・この国は必ず守られる。

まだ、時間はあるんだ。そんな顔をするなって。
毒の研究も少しずつでいいから、頼むよ。
あいつらと戦いが始まったら、何人かは毒の被害も被るのだから。」


「サンプルをなるべくとれればいいんですが・・・。」


「そうだな・・・よし、サンプル搾取隊を結成して、細胞をいただいてこよう。」


「ぜひそうしてください。でも無理はなさらないように。」


「わかったよ。じゃ、夕飯のときにまた会おうか。
仕事、仕事。」
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