守られるのは卒業よ!
マリカは王立病院の代表薬師であるバルースにオーレアの事情を説明した。


するとバルースはあまりのショックに声も出せずにいたが、何とか呼吸を整えて魔物の毒に対抗するための組織編成をしてくれた。


血清に中和剤、そして抗体と・・・研究するプロジェクトチームも1日という異例の早さでできあがった。


「ほんとにありがとうございます。
たった1日でここまでしてもらえるとは、思っていませんでした。」


「いえ、このくらいなんでもありません。
問題は、モンスターたちの細胞の集まりや材料が少ないことです。
討伐隊に少しでも多く持ちかえってもらわなければなりませんね。」


「ええ。」



その日のマリカは多忙きわまりないほど疲れていたが、オーレアのことをみんなが助けられるようにとがんばってくれたことがうれしかった。


しかし、オーレアの邸に帰るとともに、その気持ちは崩れていった。



オーレアは仕事中に、毒にやられて倒れてしまったというのだ。
使用人たちも大騒ぎで倒れたオーレアをベッドまで担ぎ込んだのだが、痛み止めで様子を見るしかできなかった。



「オーレア!しっかりして。
倒れたって・・・何が起こったの?どこが痛い?」



「ん?マリカか・・・おかえり。」


オーレアはつらそうだがうっすら笑顔でマリカを迎えた。



「すまない・・・びっくりさせちゃったね。
とうとう毒が僕の胸を蝕みだしてしまったようでね。

ズキッとした途端、倒れてしまったという失態を見せてしまったよ。」



「そんなことありません。
オーレアのことはみんな大切に思ってるんです。」


「そうかな。うれしいよ。
そうだ、胸に毒がまわってきてわかったことがあるんだ。

近いうちに、魔物どもはこの国にやってくる。
それもけっこうな数でだ。

だから、すぐにスウェルにこのことを伝えてくれ。
そして対抗組織を編成するんだ。
だけど・・・悔しいなぁ。
自分で結界を完璧に張ってがんばるとかいってたのに、こんなベッドに縛られてるのが今の姿だなんて・・・」



「そんなことはありません。
オーレアに助けてもらった人はいっぱいいるでしょう?
とにかく卑屈になったり、弱気になってはいけません。

最後の最後までがんばりましょう。」



「そうだね。希望は捨てずに僕はがんばるよ。
マリカ、ずっと僕のそばで応援してくれよな。
君の応援が、今の僕にはいちばん強くなれる薬だからね。」


「オーレア・・・。」
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