守られるのは卒業よ!
スウェルはずっと疑問に思っていたことがあった。

彼がオーレンの弟子になった頃と、風貌の違いはあるものの、今もほとんど変わっていないという事実。

それはどういうトリックがあるのか?


毒を被った後遺症というものの、突然の苦しみようも気になるところだ。
いったいオーレンの身に何が起こっているというのだろう?


スウェルは心の中にある疑問を暴いてしまいたかった。
死んでほしくはないが、疑問はすべて解いてしまいたいと思うようになっていた。



そんなことを考えていると、王宮から呼び出し電話が入った。


「何の用ですか。緊急なんですか?」


「はい、あの・・・オーレン大臣がスウェル様にきてほしいと。」


「はい、すぐにそちらへ行かせていただきます。
魔法で入らせていただいてもかまいませんか?」


「はい、応接室Aにお願いいたします。」


「応接室Aですね。わかりました。」



(おかしい・・・。いつもならオーレンがさっさとうちに来ているはず。
来れないわけでもあるのか?
まさか・・・体が・・・。)



すぐに身支度を整えて、スウェルは王宮の応接室へと移動した。


「悪い・・・スウェル、呼びつけてしまったね。」

スウェルは到着早々、自分の目を疑った。
オーレンが今、命が尽きようとしている国王と似た初老の男性になっていたからだ。


「な・・・ぜ・・・。どういうことなんです?
あなたは何らかの方法で若さを保っているんだとは思っていたけれど、なぜ、そんなことに?」


「ふふふ、バカな話だ。
自分でも、若いまま天才魔導士であり続けたかったよ。
正直いうと、マリカと結婚したかったのも本当だよ。

けど、まさか・・・魔物の毒と解毒剤によってこんな結果が出ようとはね。」


「解毒剤?・・・できたんですか?」


「ああ、マリカたち薬剤師チームは優秀でね、化け物のサンプルをいろいろと研究してくれて、僕のまみれた毒はいちばんポピュラーな毒だとわかったんだ。

だから、早く解毒剤ができあがって・・・公にはまだ使用許可は出てないんだが、僕がどうしても自分で試したかったんでね。
試したら・・・このザマだ。

つまり、毒は僕の命を蝕むかわりに、若さを与えてくれてたんだよ。
いくら魔法が得意でも実質的な若返りまでは・・・ねぇ。
解毒に成功したら、経過した時間が帰ってきた・・・それだけさ。
結局、僕は長くはないってことだ。」



「オーレン・・・俺を生徒にしてくれてたときと、ずっと変わらなかったわけが知りたかった。
マリカを連れていかれたときも、どうしても魔法で勝てないと思ってた。
でも、あなたには波乱の歴史ができていたんですね。

で・・・俺を呼びつけたわけは?
マリカのことですか?」


「ああ、それとこの国のいく末のことだ。
近いうちに、この国の結界が弱まる。
そうしたら、魔物たちがうろつき始めるだろう。

そのときには君が新たな王をはじめとする王族の皆さんといっしょに隊長として力をふるってほしい。
呪文を長く唱えなければならない魔導士よりかは、簡単な呪文や合図だけで魔法を繰り出し、剣でも戦える騎士。
僕はこれから、君に僕の知りえた魔術のすべての情報を伝える。

すまないが、手を出してくれないか?」


「こうですか?」
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