守られるのは卒業よ!
ネロはネコ耳付の帽子がお気に入りな少年ということで、マリカの助手をして働いた。

そしてネロの妹のサミナはマリカの友人たちが経営している保育園に住むことになった。

乳児院ではサミナは人間でないことがすぐに明らかになってしまうので、信頼のおけるスタッフのもとに置いてもらい、夜はマリカとネロが魔法を使える者に家に移動させてもらってサミナと夕飯から朝食までを過ごしていた。


それからまもなく、マリカはスウェルからの連絡をうけてネロだけを母であるサヴィナのところに連れていった。



「ネロ・・・マリカさんはよくしてくださっているようね。」


「はい、母様。マリカは毎日、俺とサミナを家族みたいに扱ってくれてるよ。
マリカの家の使用人のみんなも、サミナの行ってる保育園の先生もとてもいい人ばかりなんだ。」


「そう、よかったわね。・・・ありがとうマリカさん。
何て感謝したらいいのか。
私は人間を裏切ったことをしてきたのに。

でも、当時は私にかかわる人間よりも魔物たちの方が優しく思えたの。
ソロは見かけは怖かったけれど、心はずっと人間より優しかったわ。
だから私は・・・。」


「ソロさんと結婚して暮らす覚悟をしたんですね。」


「ええ、でも、魔物は人間とは通じ合えない種族も多くいて、争いは止められなかった。
それでもね・・・私と同じような人間の女も他にいたの。

だから、この近くには魔物とのハーフな子どもたちも幾人かいるの。

ソロは戦争の責任をとって自害してしまったけれど、危険な因子が見つからないハーフの子はできれば生かしてほしくてお願いにきました。」


「サヴィナさん・・・あなたは・・・旦那様のあとを追うつもりですね。
どうして?こんなかわいいお子さんがいるのに?
ネロを立派に育ててあげないの?」


「私はもう、人間と関わりたくないの。
私は貧しさのあまりに、娼婦にまで身をおとしてしまった。
そして危うく、客に恨みをもつ魔物に食われそうになったところをソロに助けてもらった。

ソロとの生活は夢みたいに幸せだったわ。
だから私は見かけは人間でもなかみは人間でいることをやめました。

でも、子どもたちに私のような運命にはなってほしくなくて・・・。
あなたにご迷惑がかかるなら、せめて残った無害の魔物たちと生きてくれれば・・・と。」


「あなたの言い分はわかりました。
そしたらこうしましょう。
残った魔物たちが人間に害を与えることもなく、ひっそり暮らせるならあなたがその村の責任者になってください。
それなら、私たちも援助しやすいでしょうしね。

ダメですか?」


「いえ・・・あの・・・なんか・・・あなた方は似ておられるんですね。」


「えっ?」


「スウェルさんも同じことを言われたのです。
私が代表になって魔物と人間の架け橋になってほしいって。

それを私が受け入れる条件は・・・、マリカさん、あなたに窓口になってほしいです。
それなら私は旅立つ日を延ばします。」



「わかったわ。私ももとは奴隷の身だけど、とりなして下さった人たちのおかげでここまでこれたんですもの。
あなたたちのこと・・・皇太子様から許可をとってがんばる!
だからあなたも死んじゃダメ。
サミナはまだ小さいわ。あんな小さな子はお母さんがいてあげなきゃ・・・ね。
悲しいでしょうけど、がんばって、強く生きて。」


「は、はい・・・。」
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