青空ライン~君が居た青春~
 
5月中旬。

雲ひとつない、きれいな青空。
私は仏壇の前で手を合わして、写真の中で笑っているきれいな女性に話しかけた。


「お母さん、おはよう。今から新しい学校だよ。お母さんの母校。アメリカから帰ってきてまだ1週間しかたってないけど……日本でも一人で頑張るよ。」


はやく家を出ないと。
転校初日遅刻しちゃう。
私は玄関のドアをあけた。
あ、そうだ、お父さんにも言わなきゃ。


「お父さん、忙しいのに日本まで来てもらってごめんね。でももう大丈夫。」


「そうか……。すまないな、一緒に住めなくて。本当は父親として一緒に日本に居たいんだが……アメリカでの仕事が忙しくてな……。」


そう言ってお父さんは悲しそうな、申し訳なさそうな顔をして言った。


「大丈夫だって。仕事もあるし……何より仲間が居るから大丈夫。」


「そうか……。いつでも電話してこい。」


「うん。いってきます。」


「行ってらっしゃい。」


私は笑顔で家を出た。
でもそんなの作り笑顔でしかない。
また離れるのに……ちゃんとした笑顔を向けられなくてごめんなさい。





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