ベビーフェイスと甘い嘘

「申し訳ないですけど、土曜日は家族で出掛ける予定がありまして……」

店長が私に頼むのはよっぽどのことで、今の状況も分かっていたけど、忙しい修吾がやっと取ってくれたお休みを無駄にしたくはなかった。

「分かりました。無理を言ってすみません」

「シフト……どうなるんですか?」

「相沢はどうしても休ませないといけないけど、その日は夕勤が居ないから、俺もそこで手一杯だし……九嶋に頼もうかな」

そこまで人が足りないのか……週一回は確保できていたはずの二人のお休みが、7月に入った途端にまた消えていた。

経営者って大変……

協力できなくて申し訳なくなってしまう。

「……九嶋くん、日勤できるんですか?」

同じ仕事をしているようで、コンビニは時間帯で仕事内容が全く違う。

「あれ?柏谷さん知らなかった?九嶋は全部の時間帯に入ることができるんですよ」

店長曰く、九嶋くんはオールラウンダーで、社員と同じような仕事もできるのに、何故か社員にはならない不思議な人らしい。

九嶋くんは初花ちゃんと同じくらい長く働いているから、6年くらいここにいる訳で……
< 101 / 620 >

この作品をシェア

pagetop