ベビーフェイスと甘い嘘
……やっぱり見られてたんだ!
「……っ、失礼します!」
カッと頬が熱くなるのを感じながらも、それだけ言って逃げるようにスタッフルームを後にした。
前言撤回。
苦手なんてもんじゃない。
あいつは嫌いだ。
あんなに嫌みっぽくて意地悪だから、いい年して(同い年だけど)独身なんだ。顔は……まぁまぁいいくせに、性格が悪いから嫌われるんだ。きっとそうだ。
頭の中で文句を呟きながら、怒りにまかせて足音も荒く店内に戻ると、初花ちゃんが驚きながら私のほうを見ていた。
店長は言いふらすタイプじゃなさそうだからスピーカーで広がることは無さそうだけど……
でも面倒なことになっちゃった……
思いがけず、秘密を握られてしまったような気持ちになって目眩がした。