ベビーフェイスと甘い嘘
「翔にあんな事、書かせるなよ」
修吾が帰宅したのは、23時を回っていた。翔の頑張りを見せたくて帰宅を待っていた私は、今日翔と二人で七夕の飾りつけをしたのよ。そう言って笹を見せた。
最初は何を言われたのか意味が分からなかった。
「……何の話?」
「短冊だよ。お前が書かせたんだろ?」
それだけ言われてようやく意味を理解した。「……どっちの短冊のことを言ってるの?」と聞き返す。
「決まってるだろ。『あかちゃんができますように』って何だよ、あれ。嫌みか?」
私が書かせたと考える想像力にも驚いたけど、それ以上に翔の無邪気で大切な願いを嫌みか?と言ったその言葉に違和感を覚えた。
このところ仕事の忙しさのせいか、イライラとして思いやりのない言動が増えた修吾に私はどう接していいのか分からなくなっていた。
「嫌みって……2つとも翔がちゃんと自分で考えたのよ。字だって頑張って自分で全部書いて……」
パパに見せたいと一生懸命に書いていた短冊を誉めるどころか、けなすなんて信じられない。
私が反論の言葉を言い終わらないうちに修吾は溜息をつきながら、「じゃあ、普段から余計なことをしゃべりすぎなんだろ」と言った。
……そうやって、すぐまた私のせいにする。