ベビーフェイスと甘い嘘
灯さんとの事は根拠のない嫉妬だと思いたかった。
だけど、その嫉妬は確実に私の心を蝕んでいた。
こうして目に見える形で修吾と灯さんが繋がっているのを知ってしまうと、さすがに傷ついてしまう。
考え過ぎだと、いとこ同士なんだからと笑い飛ばせれば少しは気も楽になれたのに。
……知ってるんだから。
私はあなたの気持ちを全て知っていて、それでも嘘をついたんだから。
5年前、勇気がなくてついた小さな嘘。
その嘘は今では手に追えないほど膨らんで、喉の奥に張り付いてなかなか離れてくれない……
土曜日も日曜日も仕事だと言って、修吾は早くから出掛けて行った。
最近の週末はいつもこんな感じだから、私も翔も、もうすっかり慣れてしまった。
日曜日は朝から雨が降っていて……ベランダに置かれた笹も空と同じように泣きながら悲しげに揺れているように見えた。
その様子を見ていると、なんだか私まで悲しくなってきて……自宅の笹には願い事を飾ることをやめた。
『家族』を支えにしているくせに、その『家族』に願う事が思い浮かばなかったから。
***
七夕祭りが終わった。
今日まで店頭を賑やかに飾っていた笹も祭りが終わると早々に片付けられてしまう運命だ。
「短冊はいつ外すの?」
朝日勤で入っていた私は、朝から夕方まで通しの初花ちゃんに笹を片付ける予定を確認した。午前中に外してしまうのなら、今日の仕事の流れも多少違ってくる。
「あ、私仕事終わりにちゃっちゃっとやりますよ。夕方のほうが混まないですからね。もたついてるところを発見したら、茜さん手伝ってくださいね」
初花ちゃんはそう言いながら、任せてください!と胸を叩いた。
今日は初花ちゃんの勤務が終わるのを待って、6月いっぱいで産休に入った鞠枝さんの送別会をすることになっていた。
送別会と言っても10人足らずの職場だ。今日は鞠枝さんとシフトで関わりのあるスタッフだけで集まる予定だった。