ベビーフェイスと甘い嘘

二人目でこんなに悩んでいるのだ。もちろん、大変だとは思うけど、一回の妊娠で二人授かることができた奈緒美ちゃんが羨ましかった。

「双子が……いいの?」

直喜が不思議そうに聞いてくる。

「そうじゃないの。翔……子どもがね、今一人だから、兄弟がいたらいいなって言ってて……だからね、奈緒美ちゃんが双子だって聞いたらなんだか羨ましくなっちゃった」

「兄弟って……そんなにいいかな?」

「いたらいいと思うわよ。私だって姉妹だし、一人っ子よりはいいんじゃない?直喜だってお兄さんがいるじゃない」

「うちの子ね、姪っ子と仲良しでよく妹の家に遊びに行くんだけど、帰って来て一人になると凄く寂しがるの」

「妹に赤ちゃんができてね。今6ヵ月なんだけど、『翔の家には赤ちゃんできないのー?』なんて聞かれちゃったのよね」

「七夕のお願い事だって、姪っ子と結婚できますように、ってのと一緒に『赤ちゃんができますように』って書きたいって言ったのよ」


ほんと困っちゃってね……とか、さすがにそればっかりは約束できないもんねぇ……なんて話を続けていた私は、直喜の表情からだんだんと笑顔が消えていったことになんて全く気がついていなかった。
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