ベビーフェイスと甘い嘘
細身に見えるけど意外と引き締まった身体や、私の手を握りしめたままで壁に押さえつけているその長い指に乱されてしまったあの日の事まで思い出して、思わずカッと身体が熱くなる。
抵抗する私の身体を易々と押さえつけて思いのままに唇を貪るこの人は、確かに男だった。
直喜がようやく唇を離した時には、私に抵抗する力は無くなっていた。足元から力が抜けて、膝はどうしようもないくらいにガクガクと震えている。
壁に凭れたまま、はぁ、はぁと荒く息を吐く私を見つめるその表情は変わらず怒りに満ちていたけれど、瞳は熱に浮かされているようで……そこには欲情が見え隠れしていた。
「どうして?……って目をしてるね」
私の身体から力が抜けたのを感じたのか、直喜は抑えつけている手を離して目の前に膝をついた。上目遣いに熱っぽく私を見つめながら、直喜が囁いてくる。
「茜さんが悪いんだよ。期待させるくせに、簡単に傷つけて……だけど、今なんて真っ赤になって唇も半開きで。こんなに可愛いくせに、誘ってる自覚も無いし……」
「どれだけ自分が無自覚で無防備かって……ちょっとは思い知ってよ」
そう言って直喜は私の頭を引き寄せて、首筋に顔をうずめてきた。
首筋に、耳に、熱い吐息を感じる度に身体の奥底からゾクリとした震えが沸き起こる。
「はぁっ……んっ……」
やがて唇が触れ、チクリとした痛みが走ると思わず喘ぎの吐息が漏れた。