ベビーフェイスと甘い嘘
「ん、任せて。とびきり可愛くしてあげる」
胸元にちらりと視線を向けたけど、芽衣はそれ以上何を聞くこともなく寝室のクローゼットへと向かって行った。
事情は聞かれなかったけど……
レース素材のハイネックブラウスにフレアスカートというこの格好は、33歳には正直キツい。
「茜ちゃん可愛い!」
ニコニコと笑う芽依の表情を見て、『この格好が嫌だったら、何があったか全部話しなさいよ』という無言の圧力を感じたので、甘んじて受け入れることに決めた。
「たまにはこんな可愛い服着たらいいのに」
……まだ言うか。
芽依は私とは違って、素直で正直で可愛い。
言いたいことも言えなくて……いつも作り笑顔で言葉を飲み込んで、嘘ばっかりついている私とは大違いだ。
そんな妹だから、今の私の悩みを相談することもためらわれた。
全て話したらきっと芽依は修吾と灯さんに「白状しなさいよ!」と詰め寄って、その足で『ウサミ』まで向かって行くに違いない。
それはそれで別の悩みが生まれそうなので、しばらく今の悩みは心の奥底に仕舞っておくことにした。