ベビーフェイスと甘い嘘
「……あれは私達のせいでもありますからね。初花ちゃんのイタズラを黙って見ていて、すみませんでした」
「止めたとしても相沢なら強引にでも飲ませてたでしょうから。柏谷さんが気にすることじゃないです。」
「分かりました。気にしないことにします」
私は笑顔でそう言って商品の補充に取りかかったけど、店長はにこりともしなかった。
この人の笑顔は営業スマイルか愛想笑いだ。客でもなく、愛想を振り撒いても思い通りに動かせない私には笑顔は必要ないと思っているのだろう。
それで良かった。余計な愛想は必要ない。私はここではただ淡々と仕事をこなすだけだ。
店長とはあまり関わりたくない。
私は、この人が苦手だ。
何を考えているか分からない冷たい感じと、張り付けたような愛想笑いが苦手だった。
どうしてこの人が苦手だと思ったのか……
それは、ここに居る時の自分に似ていると気がついてしまったからだった。
まるで鏡を見ているようでいたたまれなくなってしまうのだ。