ベビーフェイスと甘い嘘
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午前9時。通勤時間を過ぎたコンビニの店内は、驚くほど暇になる。
この時間はレジの備品を補充しながら、相方の子とちょっとしたお喋りをする……はずなんだけど、店長相手だとそうもいかない。
大体雑談する店長なんて想像もできない。
店長が初花ちゃんみたいにどこぞのカフェの店員さんが美人でねー、とか、唯ちゃんみたいにウワサ話やあの店のスイーツがおいしいんですぅ!なんて会話をし始めたら、驚きを通り越して何か悪い病気にでもかかったんじゃないかと思ってしまいそうだ。
そんなバカな想像をしていたものだから、お店の前で私の様子をうかがうように見ていた人が居たなんて、全然気がつかなかった。
「すみませんっ!!」
そう言って自動ドアが開くのを待ちきれないように店内に入り込んで来たその人物に驚く。
「芽依、どうしたの?亜依は?」
芽依がどうして今ここにいるんだろう。普段なら亜依の幼稚園のバスを待っている時間のはずなのに。
「亜依?今日は送って行ったの。一刻も早くここに来たかったから」
そう言うなり、レジ前にいた店長に向かって脇目も振らずにスタスタと歩み寄った。
……何だか嫌な予感がする。
猪突猛進。無鉄砲。向こう見ず。
芽依に付けられた、姉としては恥ずかしくなるような数々のあだ名。
それは決して誇張ではなく、的確に本人を現しているのだ。