ベビーフェイスと甘い嘘
藍色の短冊をじっと見つめる。
私の為に書いたって言ってたけど、どう考えても私は直喜の大切な人じゃない。
意味が分からない。
あれだけ「短冊見てくれた?」なんて気にしていたのに。他人へのメッセージを見せられた気分だ。
でも、私にもしあわせな人生が待っていればいいのにね、とは思う。
どこをどう進んでいけばしあわせにたどり着けるのかは、今は全く見当もつかないけれど。
「お疲れ様でーす。……茜さん、疲れてますねー。店長にやられちゃいました?」
短冊を見ているうちに店長はスタッフルームへと消え、入れ替わりに唯ちゃんが店内へと入って来ていた。
どうやら、人望うんぬんの話はスルーされたらしい。
ニコニコと陽気に話しかける同僚にちらりと目をやる。……もう、やったやらないの話は勘弁して欲しい。
「こき使われたのよ。レイアウトばっかりで。疲れたからもうあがるね」
わざわざ『こき使われた』と言い直してからお疲れ様です、と明るい声を出して店を離れた。
元気を出さないとやってられない。身体はいつもの倍は疲れているけれど……これからもっと疲れることが待っているんだから。
ちゃんと話すと約束した以上は、芽依ときちんと話をしなくてはいけない。
忙しく仕事をしながらも、私は覚悟を決めていた。
修吾の事も含めてこの2ヶ月間のことを全て話してしまおう。そう思っていた。