ベビーフェイスと甘い嘘
覚悟を決めてしまえば、修吾とのことは話すのにためらいは無かった。だけど、直喜のことは芽依にどう説明していいのか分からない。
九嶋くんに打ち明けた時は、言い逃れのできない状況だったから、ほぼ全て話してしまったのだけど。
そして、その時と比べてまた直喜に対する感情がちょっとだけ変わってきているのも自覚していた。
だけど、具体的にどんな感情?と聞かれても一言では説明できないから困ってしまう。
それはちょっとだけ不思議な感情で。
金曜の事だって他の人から見たら襲われたようにしか見えないくらい強引に迫られたのに、私はそれを嫌だとは決して思っていなくて。
酔っ払いの戯言かもしれない『会いたかった』という言葉だって、嫌がるふりはしたけど、心の中では好意的に受け止めていた。
短冊だって他の人に書いたんでしょ、と思いながらもほんとにしあわせになれたらいいのに……なんて考えてしまっている。
直喜が私をしあわせにしてくれる訳じゃないのにね。
……どうしてだろう。直喜の言葉は嘘っぽくて一つも本当の言葉として聞こえて来ないのに、その瞳を見ると嘘をついているようには見えなくて戸惑ってしまう。
あの漆黒の瞳は私の心を惑わせる。揺さぶったまま、捉えて離さない。
揺れて惑うこの感情は何なんだろう?
彼に惹かれている訳じゃないと思う。
だからこれは恋ではなくて。
まだ理解して整理することのできない不確かな感情。
今は、ただ、それだけ。