ベビーフェイスと甘い嘘

だけど修吾は私のことも、新しい家族も必要としていなかったのだ。


今まで家族として過ごしてきた年月が、修吾にとって何の意味も価値も無いものだったのだと気づかされたその瞬間、私は今までどうやって生きてきたのか、これからどうすればいいのかが全く分からなくなってしまった。


灯さんとのことを修吾に確かめる勇気も無いくせに、嫉妬の感情に打ちのめされている私はおかしいのかもしれない。

頭ではそう考えていても、心がどうしても割りきれなかった。


紙一枚で繋がっている薄っぺらい関係ではなくて、家族として同じ方向を向いて寄り添い歩いていく。私は修吾とそんな夫婦になりたかった。


だけど家族を守りたいと思っていたのは、私だけだった。


だって私達は、家族ではなかったのだから。少なくとも修吾の中では。


5年も一緒に暮らしていたのに私達は家族になれず、修吾の気持ちも変わることが無かった。それがいちばん悔しかった。


***

「茜ちゃん。……これからどうするの?」


修吾は浮気をしている。


だけど、証拠は無い。


浮気を確信していたのに証拠を探さなかったのは、私の妻としての最後のプライドだった。


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