ベビーフェイスと甘い嘘

でも、最初からありもしない愛を求めるのは虚しいだけ……そう考えるようになったのは直喜の存在が大きいと思う。


前に感じた通り、直喜は私が壊したくないと思いこんでいた嘘で塗り固めた生活をあっさりと壊すような、そんな人だった。


直喜への気持ちは分からないのに、彼のことを考えない日はなくて……私の心の中には確実に彼が存在している。


それを九嶋くんに話したことで、心はだいぶ落ち着きを取り戻していた。


もやもやとして、どうしたらいいか分からない気持ちをずっと抱えたままで苦しかったけど、吐き出せる人が近くにいることに安心する。

私は九嶋くんにはだいぶ気を許しているんだろう。


「じゃあ、しばらくここには来ないほうがいいよね。楽しくなってきたとこだったのに、残念。身軽になったらまた顔貸してね」


「身軽になったら？……どうして来ちゃいけないの？」


安心できる場所が無くなってしまうのは寂しいのに。