ベビーフェイスと甘い嘘
「二人とも、もう充分食べたわね?遊んだわね?花火見に行くよー!」
芽依が時計を見ながら子ども達に声をかけている。
時刻は7時ちょっと前。そろそろ花火が上がりはじめる時間だった。
「えー!まだヨーヨー釣りしてないのに!!」
芽依の言葉を聞いて、翔が不満げに声をあげた。
「花火見たら出店が終わる前にまた戻って来ようよ。で、一緒にヨーヨー釣りやろう。……ね?いいでしょ、ねーさん」
九嶋くんはそう言って翔をなだめると、手を取って一緒に神社の方へと歩き出した。
***
高台の神社の周りは、花火を見に来た人が集まってごった返していた。
九嶋くんの話しだと、神社の敷地にある、展望台のような造りの東屋が、花火がいちばん良く見える場所らしい。
そこに向かって歩いていたけれど、同じくベストポジションで花火を見ようとしている人達で既にいっぱいになってしまっていた。
それでも何とか東屋の脇に羽黒川の方向が見える場所を見つけて、私達はそこで花火を見ることにした。