ベビーフェイスと甘い嘘

「ふふ、亜依。この子、びっくりしてるよ」


芽依が亜依の手を取って自分のお腹に当てた。


「わっ、ほんとだ。うごいてる!……ちびたろうちゃん、こわくないよー」


亜依が芽依のお腹に向かって話かけている。

『ちび』はお腹の中の子どもの仮の名前で亜依が付けたものだ。先日まで無かった『たろう』が付いたのは、この前の検診で男の子だって分かったからなのだろう。


しあわせそうに笑い合う二人を、微笑ましい気持ちで見ていた。

でも、じっと見ているうちに寂しい気持ちのほうが勝ってしまって……それ以上二人と翔のことを見ていられず、ごまかすように再び夜空を見上げた。



翔に、心の中でごめんねと謝る。


……ママね、翔の七夕のお願い事を……1つ叶えてあげられなくなっちゃうんだ。



罪悪感と共に花火を見上げると、パラパラと舞って落ちていく光の欠片達が沈んで堕ちていく自分の心と重なって見えて、何だかとても切なかった。
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