ベビーフェイスと甘い嘘
「拓実、着いたって。混まないうちに、そろそろ行こうかな」
芽依がスマホを見ながら言った。下の駐車場まで迎えに来たと拓実さんからLINEが入ったらしい。
「茜ちゃん達は、そのまま見てても良かったのに」
「いいのよ。花火終わる前にヨーヨー釣りしちゃおうかと思って。さっさと帰っちゃたほうが人混みに巻き込まれなくて済むしね」
水上花火が終わり、そろそろ目玉の仕掛け花火が始まろうかというタイミングだったけど、芽依達と一緒に途中まで降りることにした。
「じゃあね、芽依。拓実さんによろしくね」
「茜ちゃーん、翔、またねー。智晶ちゃん、二人のこと頼んだよー」
「おばちゃん、かけるくん、ちあきちゃん、ばいばーい」
そのまま駐車場に向かう二人を見送ってから、私達3人は出店のほうへと向かった。
「芽依さん、ほんとにねーさんの妹なの?人に馴染むの早すぎでしょ」
すっかり今日1日で『ちあきちゃん』になってしまった九嶋くんは、そう笑いながら私に話しかけてきた。
「あれが芽依の凄いところよ。そう言う九嶋くんだってあんまり人見知りしないでしょ?羨ましいな」
「ねーさんは受け身だもんね。でもさ、確かに俺は人見知りはしないけど、基本的にはねーさんと一緒だって。ま、最近はねーさんも俺も、ちょっと人付き合い頑張ってるよね」