ベビーフェイスと甘い嘘
「私達、ずっと上で花火見てたのよ。で、帰ろうとしたら前を歩いてる人が何だか茜ちゃんに似てて『あの人茜ちゃんに似てない?』ってずっと千鶴と話してたんだよね」
「で、近づいてみたら翔くんもいるじゃない?もう間違いないなと思って声を掛けたってワケ」
「茜ちゃん、凄く綺麗!いつもと雰囲気が全然違うからびっくりしちゃった」
そこまで話して、二人の視線が私の後ろで止まった。
たぶん近づくまで私だと確信が持てなかったのは、普段の私の雰囲気とあまりにも違う格好をしているのと……
「……で、あの人は誰?」
裕子姉さんがこそこそと小声で何だか聞きにくそうに話かけてきた。
二人は修吾の事を知っているから、自分達が知らない若い男と翔が家族みたいに手を繋いで立っているこの状況を……いろいろと誤解していてもおかしくない。
「あのね……」
説明しようとしたところで、九嶋くんのほうがこの微妙な空気を察してくれたらしい。
いつもの人懐こい笑顔で「こんばんはー」と先に挨拶をしてくれた。
「えっと、この人は……コンビニの同僚なの。さっきまで芽依と亜依もいたんだよ」
……何だか言い訳っぽくなっちゃった。
「どうも。柏谷さんの同僚の九嶋です。柏谷さん、何年も駅前に住んでるのに祭に来たこと無いって言うから、子ども達誘って行きましょうよって俺が声かけたんですよ」
なー、と九嶋くんが翔に向かって言うと、翔も笑顔で「うん。ちあきちゃんはかけるのおともだちだよー」と答えた。