ベビーフェイスと甘い嘘
「旦那さんが下で待ってるんだよね?奈緒美ちゃん、一人で降りて来られるの?彼女、確か双子でしょ?」
私の言葉に二人とも、えっ?という表情になる。
「あれ?茜ちゃん……奈緒美ちゃんの子どもが双子だって知ってたっけ」
「……えっ」
心配のあまりつい双子だと口走ってしまった。
そうか……双子だって私は直喜から聞いたんだった。
「結婚式の時、言ってたっけ?まぁいいや。あの子細いでしょ?双子って言ってもそんなにお腹大きくないからまだ余裕で歩けるし。旦那さんは仕事で来られなかったけど、迎えには来てくれるし。今は弟くんが付いてるから大丈夫よ」
深く突っ込まれなかった事に安心しながらも、千鶴ちゃんの言葉を聞いて、今度は違う意味でえっ、と驚く。
奈緒美ちゃんと、3ヶ月だけ一緒に働いていた時の記憶をフル回転させる。
……確か奈緒美ちゃんは一人っ子だったはず。
じゃあ、二人の言ってる弟って……
固まってしまった私に「茜ちゃん?」と裕子姉さんが不思議そうに聞いてきた。
思わず九嶋くんのほうに視線を向けると、何故か九嶋くんまで私と同じように困惑した表情をしていた。
「あー、奈緒美ちゃーん、こっちこっちー!」
千鶴ちゃんが坂道の上のほうに向かって手を大きく振った。
人混みの中で、奈緒美ちゃんの身体を支えるように一緒に歩いていたその男の人は……
……やっぱり直喜だった。