ベビーフェイスと甘い嘘

その時だった。

「柏谷さん、こんばんは」

いきなり直喜が話かけてきた。

それまで視線を合わせないように話をしていたのに、名前を呼ばれた事に驚いて、避けていた視線を思わず直喜へと向けてしまっていた。


……どうして話かけるの?

……どうしよう。何て答えたらいいの?


私と同じように気まずい思いをしているとばかり思っていたのに、直喜は何故か笑顔で私を見ていて……


その笑顔に軽くパニックになった。


「えっ、直喜ちゃん茜さんのこと知ってるの?」


奈緒美ちゃんの言葉に、裕子姉さんと千鶴ちゃんも『そうなの?!』と言った感じで私達を交互に見比べていた。


戸惑う私達をよそに、直喜はにっこりと笑いながら答えた。


「うん。商店街のコンビニの人でしょ?美人さんが多いから、配達中につい寄っちゃうんだよねー」


「アイザワさんでしょ?モテギさんでしょ?あと、柏谷さん……だよね?」
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