ベビーフェイスと甘い嘘
すっ、と指を指されて我に返る。
ひょっとして……
結婚式のことから……話を逸らしてくれ、た?
「あっ……えっ、と……こんばんは。普段と感じが違うから気がつかなくて」
話を合わせて、今気がつきましたという感じで挨拶をした。
「奈緒ちゃんこそ、柏谷さんと知り合いだったんだ?」
「昔一緒に働いてたんだよ。図書館で」
「へー、そうなの?結婚式に来てたの?知らなかったな。知ってたら絶対紹介してもらったのに」
「はぁ……直喜ちゃん、茜さんはダメだよ!結婚してるんだから!あと、配達中に寄り道しちゃダメでしょ。いい加減フラフラしてないで勇喜みたいに美人な子を見つけて落ち着きなさい!」
奈緒美ちゃんは直喜を見上げながら呆れたように言った。その様子は、義理のきょうだいに見えないほど仲睦まじい。
濃紺のシンプルなワンピースを着ている奈緒美ちゃんの横に立つ直喜は、同じ色合いの藍色の浴衣を着ていた。
彼女の身体を支えるように立つその姿は、まるで似合いの夫婦のようだった。