ベビーフェイスと甘い嘘
「はぁ?自分で『美人』って言う?いいじゃん。知り合いになるくらい。別に悪いことする訳じゃないんだから」
その言葉に今度は私のほうが呆れてしまった。散々『悪いこと』をしたくせに……
それとも私との間にあったアレコレなんて『悪いこと』のうちにも入らないのかな。
顔色一つ変えずにさらっと嘘をついた直喜を見て、さっきまで感じていた気まずい気持ちはすっかり消えてしまっていた。
「ねぇママ……はなび、おわっちゃったよ?」
いつの間にか翔が側に来て、私の浴衣の袂を引っ張りながらこっそりと言った。
確かにさっきまで聞こえていた花火の音が消えて、駐車場へと向かうこの道は、人がすれ違うのも大変なくらい混みあってきていた。
「そっか、もうそろそろ下りないとお店終わっちゃうね」
話を切りあげる理由ができたことに、正直ほっとしていた。これ以上は心臓がもたない。
「あ、私達そろそろーー」
そう言いかけたところで、私の後ろに視線を移した奈緒美ちゃんが「……あれっ?」と話を遮った。