ベビーフェイスと甘い嘘

その色気に満ちた表情を見た瞬間、私の心の奥底に眠っていた感情に火が付いたような気がした。


彼のその漆黒の瞳が欲情に揺れる様を見てみたい。……ふとそんな事を考えてしまっていた。


目的がはっきりしてるんだから、後腐れもないし面倒なことにもならないはず……だよね。


単純に、私の今の感情を見抜いたこの男に興味が沸いた。


それと同時に、この人もしあわせが我慢ならないと言った訳を知りたいと思った。



今、目の前に見えるしあわせが疎ましくて、ここ数ヶ月目に見えない嫉妬に苛まれていた私にとって、彼の誘いは甘い果実のように魅力的だった。



……たぶん私はこの時どうかしていたのだ。



漆黒の瞳に魅入られるように、私は彼の差し出した手を取った。



そしてそのまま式場を抜け出して……



私は彼と一夜を共にした。
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