ベビーフェイスと甘い嘘

「そんなにおかしい?」


目の前の九嶋くんの顔をじっと見つめる。


九嶋くんは26歳だけど、私と同じく童顔で、実年齢よりもっと若く見える。明るくオープンな性格でみんなから親しまれている可愛いらしい子だ。


私の言葉に、九嶋くんはにこりと笑い、


「明らかにおかしいよ。出勤忘れて只働きして、5個入りのからあげを6個にサービスして、何にもないとこで転んじゃってるし……今日だってぼんやりして出勤忘れてたでしょ?」


と、その柔和な顔立ちに似合わず、遠慮なく私のおかしい点をいくつも指摘してくれた。


「ご、ごめんね。確かにおかしいね……」


とりあえず謝るしかない。
悪いのは私だ。


刺激を手に入れたら、今までのペースが崩れてしまったなんて……怒られても仕方ない事だと思う。


でも忘れようとすればするほどあの日の事が蘇って、その度に私は動揺してしまうのだ。
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