ベビーフェイスと甘い嘘

「ご飯は?外で食べて来たの?」


「ああ。済ませてきた」


そう言って目も合わせずに返事をする冷たい夫の声にも、もうすっかり慣れてしまっていた。


最近じゃ一言、二言会話があればいい方だ。


これから修吾が私に関心を寄せることはまず無いだろうし……きっと触れあうことだってもうないのだろう。


私達の心のように冷えきってしまった夕食から目を背けるように、冷蔵庫の扉をパタンと閉めた。


「……今日、誰と一緒だったんだ?」


「……えっ?誰って?」


「祭りに行ったんだろ?だったら、駅前から帰って来るにしたって遅すぎるだろ。花火だってとっくに終わってただろうし。こんな時間まで何してたんだ?……しかもその格好、どうしたんだよ?」


いつもは私が誰とどうしていようが一切関心が無かった修吾の口から、次々と詮索するような言葉が出てきたことに驚いた。


「芽依と亜依と一緒に行ったのよ。途中で裕子姉さんと千鶴ちゃんに会って話し込んだから遅くなっちゃったの。浴衣は……知り合いから借りたのよ。子ども達の浴衣着せてくれるって言ったからついでにね」


「……知り合いって、男か?」


「女だよ。コンビニの同僚」
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