ベビーフェイスと甘い嘘
先日、店長からお中元と夏物の商品のレイアウトを頼まれた。
商品を並べて既成のポップを付けるだけでは物足りなくて、勝手に美術系の短大に通っている唯ちゃんに夏っぽい飾りを作ってもらったり(不器用で飾りが全く作れなかったため)、ポップを書いてもらったり(一回だけ店長にポップを頼まれたことがあったけど、ため息と共に無言で返されたため)したのだけど……
ずいぶん勝手に仕事を進めてしまった自覚があったので、褒められたことに驚いてしまった。
……褒めることもあるんだ。
店長と一緒に仕事をして4ヶ月、初めてまともに褒められたような気がする。
「褒めたのが意外でしたか?」
そして私の考えていることは、いつもすぐにこの男に読まれてしまう。
「きちんと仕事をこなして、結果が出ればそれ相応の評価はしますよ」
つまり、この前あれだけレイアウトをこなしたのに褒めなかったのは、結果が出る前だったからってこと?
この人の判断基準、分かりにくい!
「それに、この前は柏谷さん、怪我してましたからね。フライヤーに立たせる訳にもいかないし、掃除や水仕事だってあれじゃ面倒だったでしょう?」
通常以外の業務ばかりさせられていたのも、怪我をした私を慮ってのことだったらしい。
確かに水仕事もしなかったから、ガーゼを取り替える手間は省けた。けど、代わりにストレスがたまりまくってたんですけど……
店長の気遣いは手の怪我には良かったけど、心にはあまり良くなかったと思う。
もちろんそんな事は面と向かって言うつもりも無いので、私は「はぁ……」と曖昧な返事を返した。