ベビーフェイスと甘い嘘

「お店で……噂に?」

「私、よく『ウサミ』に行くってのは話したよね?で、買い物してると常連さん達が固まって色々な話をしてるのをよく耳にするんだけど……」

「『ナオキくんが夏祭りで出店の辺りを、子どもと手を繋いで浴衣を着た女の人と歩いてた』って」


……見られてたんだ。


「最初はよくある噂話だと思ってたんだよ。でもね、中心で話してた奥さんが、何だかやけにその話題に詳しくて……ウサミと一緒にいた人の浴衣の感じとか、特徴とか……」


聞けば聞くほど私とそっくりで、芽依は驚いたらしい。


「まぁ……ばったり会ったのも一緒にいたのも事実だからね。噂になっても仕方ないんだけど」


私は芽依と別れた後の出来事を、かいつまんで説明した。

だけど、直喜が過去の自分を知っていたことと、公園での出来事は打ち明ける事ができなかった。


話してしまうと勘の鋭い(間違った方向へ向かわなければ……だけど)芽依は、それだけで私の直喜への気持ちまで見抜いてしまうかもしれない。


でも、話をしているうちに、どこかに違和感があることに気がついた。


何かは分からないけど、芽依から聞いた話と自分の記憶のどこかがうまく噛み合っていない。
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