ベビーフェイスと甘い嘘
「茜ちゃん。しばらくウサミナオキに会っちゃダメだよ」
考えこんでいると、九嶋くんと同じように芽依にも釘を刺された。
「……九嶋くんと同じこと言うのね」
「そうなんだ。……智晶ちゃんはウサミがどんなヤツか知ってるから、こんな風にすぐに噂になっちゃうことまで分かってたんだね」
『直喜に会うのは絶体ダメ』
『九嶋くんに言われなくてもそうするわよ、って言うとこじゃないの?』
呆れ顔だったけど九嶋くんは優しく忠告してくれた。
避けられている本当の原因は分からないけれど、目も合わせてもらえない今の状態はとても寂しい。
「しかし世間も狭いよね。茜ちゃんの元同僚がウサミナオキの義理の姉で、智晶ちゃんともワケアリな感じかぁ。……で?茜ちゃんはどーするの?」
「どうするって?」
「自分だってこれからいろいろと大変になるのに、どう考えても面倒なことに首を突っ込むか、それとも突っ込まないかってこと」
それなら答えは決まっている。
「九嶋くんと話してみるね。……まずは浴衣を返しに行かなきゃ」
関わらない、という選択は考えられない。
九嶋くんにはいろいろ教えてもらったり助けてもらったから、できれば力になりたい。