ベビーフェイスと甘い嘘

「そっか、分かった。茜ちゃん、私はいつでも茜ちゃん『だけ』の味方だからね!」


芽依の激励は心強かった。


「あ、あとそれと」

ふと思い出したように芽依が言った。


「『ウサミ』での噂のことなんだけど……何だか悪意を感じたんだよね」


「悪意?」


「上手く言えないけど話の方向がね、ウサミナオキ本人よりも噂になってる人に向かってるような気がしたんだよね。わざと派手な噂にして、その人をみんなに探させようとしてるって言うか……そんな感じがした」

「実際、みんな『誰なの?その女?!』って言ってたしね」


噂話とそれに乗っかっていく様々な悪意。私も芽依も昔散々経験したことだ。


父が死んだ時、何故か自殺したのではないかと噂になった。


ほぼ入院生活を送ることなくロウソクの火がフッと消えるように一瞬で亡くなったので、近所の人からはいつもの日常から突然父が消えたように思えたのだろう。


だけどそれを自殺したことにすり替えてしまったその噂は、どう考えても悪意が為せる業だった。


田舎の噂はあること無いこと関係なく、広がってしまうのは早い。

自殺の原因は借金があったからだとか、実は浮気が発端だったとか、気がついたら驚くほどの尾ひれがついてあっという間に私の通う高校まで広まってしまっていた。
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