ベビーフェイスと甘い嘘
先生まで噂を鵜呑みにして、父親を亡くした事への気遣いよりも先に進学や学費は大丈夫なのかと聞かれた時には、呆れた笑いしか出て来なかった。
様々な悪意に音をあげた私は、内側に閉じこもった。
何も受け止めずに黙っていれば、それ以上傷つくことは無い。そう思ったからだった。
芽依は、自分に向けられた悪意には徹底的に闘って誤解を全部解いて回った。そして私の回りの人間にも真っ向から突撃して、私が受けていた攻撃を身を呈して止めてくれたのだ。
私が嫌なことを嫌だと言って、言いたいことをきちんと言える人間だったら……芽依はここまで向こう見ずな性格にはなっていなかったはずだ。
私は自ら内側に閉じこもったくせに、自分と向き合うこともしてこなかった。
だから私は人の心に向き合うことも、寄りそうこともままならないのだろう。
「……あっ」
「どうしたの?茜ちゃん」
悪意は事実をねじ曲げる。そんな事を考えていたら、さっき感じた違和感の正体に気がついた。
「『ウサミ』で芽依が聞いた噂って……直喜と翔が手を繋いでて、私が一緒に歩いてたのを見た人がいたって話だったよね?」
「うん。大体そんな感じ」