ベビーフェイスと甘い嘘
「でも変なのよ。……直喜と翔が手を繋いでた時に二人の側に居たのは、私じゃなくて奈緒美ちゃんなの」
駐車場へと下りながら出店に向かうまでの間、直喜は翔と一緒に歩いていて、その隣には奈緒美ちゃんがいた。
私は、その後ろで裕子姉さんと千鶴ちゃんと並んで歩いていた。
「『ウサミ』に出入りしてる人だったら……奈緒美さんのことは知ってるから噂にはならなかったんじゃないの?」
「それでも私だけが噂になるっておかしくない?その時は裕子姉さんと千鶴ちゃんもいたのに」
みんなと別れた後、翔はすぐに眠ってしまった。だから噂になるのなら、藤田くんが言っていたように『子どもを抱っこした直喜が女と歩いていた』って話にならないとおかしい。
単に繰返し話をしているうちに『抱っこした』から『手を繋いだ』に変わってしまっただけなのか……
「そうだね……でも、話が変わっちゃっただけなら、もうちょい茜ちゃんの容姿もぼんやりしてくと思うんだけどな」
髪型から雰囲気、浴衣の色柄まで女のほうの容姿は、はっきりと噂に盛り込まれていたらしい。
「普段の茜ちゃんのままだったら、すぐに誰だかバレちゃってたよ。智晶ちゃんに雰囲気変えてもらってて良かったね」