ベビーフェイスと甘い嘘

「さ、食べよ食べよ。お腹空いたでしょ?何にする?」


アーケードに程近いファミレスは、お盆なのに何故か混み合っていた。

「こちらでよろしいですか?」と通りに面した窓際の席に通される。


子ども用のメニューを広げて見せると、翔は無言のままハンバーグを指差した。


注文を終えると、それまで黙っていた翔がようやく口を開いた。


「ねぇママ?」


「んー、何?翔」


「ママはかけるのこと、おこらないの?」


「うーん……翔はママが怒るような悪いことをしたの?」


「だって……かける、ゆうたくんのことたたいちゃったから」


「叩いちゃうのは駄目だと思うけど、どうして喧嘩したのかママは聞いてないからまだ何も言わないよ。まずご飯を食べて、それからちゃんと話聞くからね」


夏休みで良かった。時間を気にせずゆっくりと話ができる。黙ってちゃダメだよ、という意味で言った言葉は翔にも伝わったようだった。



それにしても……お腹が空いた。


お昼はそうめんとちょっとしたおかずだけだったし。それも色々と話しながら食べたから、何だか食べたかどうかも分かんないような感じだったし。
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