ベビーフェイスと甘い嘘
「九嶋くん、良かったら……一緒に食べない?」
話をしようと決めたんだから、逃げてる場合じゃない。
「うん」
かなり勇気を出して誘ったのに、九嶋くんは嫌がるそぶりも見せずにあっさりと私達の向かいの席に座った。
***
九嶋くんは、この数日間の態度が嘘みたいに普通に話していた。
「翔、この前はいきなり帰っちゃってごめんね。ちょっと具合悪くなっちゃってさ」
夏祭りの事は話したくないんじゃないかと思ってたのに、自分から話をふって、しかも謝ってるし……
……何それ。人の気も知らないで。
九嶋くんの冷たい態度に、ちょっとだけ傷ついてたんだからね。
悩んだこの数日間を返して欲しい。
目の前で美味しそうにミックスフライを食べている九嶋くんを、じとっとした視線で睨み付けた。
「……何?ねーさん、人の顔じっと見て。あっ、エビフライは一匹しかないから、あげないよ」
「……いらない。九嶋くんはこれから仕事でしょ」
「そうだよ。……シフトちゃんと見てるんだ。ねーさんにしては、珍しいね」