ベビーフェイスと甘い嘘

「……悪かったわね」


話しかけるタイミングが分からなくて、普段はあんまり見ないシフトをずっとチェックしてたなんて……恥ずかしくて言えなかった。


「それはそうと、ねーさん達は何でここにいるの?お盆のこんな時間に」


ちらり、と私達の様子をうかがいながら聞いてくる九嶋くん。

翔の顔の傷に貼った絆創膏も目立っているし……旦那はどーしてんの?ってことも本当は聞きたいんだろうなぁ。


「二人とも晩ご飯食べ損ねちゃって。作るのも面倒だったからここに来たの」


「あー、それ分かる。作るのも片付けるのも面倒だよね。俺も今日は忙しくて、朝にパン食べたっきりだったから気がついたら、ふらふらっとここに入ってた」



「だめだよ、ちあきちゃん!ごはんたべないとまたぐあいわるくなっちゃうよ!」


たべて!と翔はニンジンを九嶋くんのお皿に乗せたけど、「翔、お前ニンジン嫌いなんだろ。ちゃんと食べろー」と、あっさり見破られて戻されていた。


思わずふふっ、と笑いが溢れる。


「ねーさん、ごめんね」


笑っている私をちらりと見ながら、九嶋くんは謝ってきた。


「それはいいんだけど……」
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