ベビーフェイスと甘い嘘

何も知らなかったけど、九嶋くんに辛い思いをさせてしまった原因は私にもある。


私と一緒じゃなかったら、奈緒美ちゃんに会うことは無かった。


それに翔と一緒にいたから、気がつかれる前にその場を立ち去ることもできなかっただろうから。


「なんで……ちあきちゃんがママにごめんねしてるの?」


何にも知らない翔が首を傾げている。


「お祭りの話だよ。一緒に帰れなくてごめんって。さっき翔にはごめんねって言ったけど、ママには言ってなかったからね」


九嶋くんがそう言うと、「そっかー。そうだよね」と翔は呟いた。


それだけの「ごめんね」じゃないと思うんだけど、翔もいるし、誰が聞いているか分からないこの場では問いかけることもできなかったから、黙ってうなずくことにした。



「……かけるもママにごめんねしていい?」


「いいよ。話して」


「あのね、ママ。……かけるね、ゆうたくんにいじわるされたんだ。くやしかったからたたいちゃったんだ」


「どんないじわるをされたの?」


「あのね……パパがね……もうかけるのことキライなんだよって、ゆうたくんがいったんだ」
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