ベビーフェイスと甘い嘘
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「で?結局何が言いたいんだよ」
私が5年間飲み込み続けてやっとの思いで口にした言葉は、修吾のこの一言であっさりと片付けられた。
「何って……」
「悠太が翔に言ったことで翔が傷ついたのは分かった。翔だけが悪い訳じゃないことも」
「それは分かったけど……何で俺が灯が好きだって話になるんだよ」
翔は修吾に嫌われていると思いこんでいたから、帰宅してすぐに修吾と話をさせるのは酷だと思った。
実際ずっと気を張っていたのだろう。家に戻るなり、「ねむい……」と口にしてお風呂にも入らずに眠りこけてしまった。
勝手に家を空けた上、話し合わないうちに翔を寝かしつけた私を見て、修吾は怒りを露にしていた。
「じゃあ、修吾は悠太くんがどうして突然こんな事を言い出したか心当たりがあるの?」
「あるわけないだろ。大体……翔のことが嫌いだなんて俺は一言も言ってないよ。馬鹿馬鹿しい」
『翔のことは』嫌いだって言ってないのか。
じゃあ……私のことは?
悠太くんに言って無くても、灯さんには言ってたりしてね……
「何だよ、その目は。言いたいことがあるならはっきり言えよ」