ベビーフェイスと甘い嘘
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どんなに慣れた仕事でも、ぼんやりしながら進めると上手くいかないものらしい。
いつもより雑に揃えられた商品を目にして、深いため息が出た。
……もう二度と会うことのない人なのに。
それなのに何度も思い出してしまうなんて、どうかしてる。
私は次の日の明け方、こっそりとホテルを抜け出した。だから相手の連絡先も、名前すらも知らない。
だけど、仕事にも支障が出るくらい何度も思い返してしまうのは……あの人が、私の名前を知っていたからだ。
あの日、ホテルの部屋に入った瞬間に後ろからぎゅっと抱き締められた。そして耳元でこう囁かれたのだ。
「可愛い人ですね…………アカネさんは」
急に名前を呼ばれて、えっ?!と驚いて振り返った。
『どうして名前を知ってるの?』そう言いかけたけれど、その言葉を口にする前に唇を塞がれて、私の疑問は彼の中に飲み込まれていった。
動揺と混乱を抱えたままで、私は彼の唇に、手に乱されていったのだ。