ベビーフェイスと甘い嘘

「そーいうとこ、あいつとそっくり」

ぶつぶつと言いながら、九嶋くんはスマホを取り出して電話をかけた。


「あ、もしもし芽依さん?……うん。……そう。やっぱりダメだったみたい」


……はっ?芽依?!


「うん。あ、そう?じゃあ13時まで預かるから、任せといて。また連絡するよ、じゃあね」


「ちょ、ちょっと九嶋くん!何で芽依と……」


「はい、車出すから静かにしてねー」


……何で芽依の番号知ってるの?いつの間に?!


質問を遮られたまま車は走り出して、大通りを直進して見慣れた小路へと進んで行った。


芽依の家とは逆方向だ。


しかも、今気がついたけど、九嶋くんにどこに送って欲しいか伝えないうちに車が走り出してしまっている。


さっき、『13時まで預かるから』って言ってたよね……


「あの……九嶋くん。ひょっとして……今向かってるのって……」


「俺の家だけど?」


それが何か?って感じでさらっと言われても……


「ちょっと待って!芽依と何を話したの?」


焦る私に九嶋くんは、「興奮するとますます熱が上がるよー」とのんびりとした口調で応えるから、ますます混乱してしまった。

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